着物のお手入れに関するご質問など
Q:一度袖を通した着物は必ず洗った方が良い?
Q:虫干しはどのようにすれば良い?
Q:染みは丸洗いで落とせますか?
Q:染みが黄ばんできています。綺麗にはなりますか?
Q:染みがついたのですが、自分で出来る応急処置はありますか?
Q:しまっておいた着物を久しぶりに出したらカビや変色が出ています。どうしたら良いでしょうか?
Q:カビなどを防ぐ方法はありますか?
Q:後から出て来る染みを防ぐには?
Q:和箪笥以外での保管には?
Q:絹は虫が喰わないって聞いたんだけど?
Q:着物にアイロンがけって可能?
Q:「着物を何時までも美しく保つ!」なんて触れ込みの撥水加工って?
Q:もっとも多いとされるファンデーション汚れの処置は?
Q:洗い張りはどんなときにするものですか?
Q:着物の寸法を大きくしたいが、どの位まで出来るの?
A:寸法がどれ位出せるかは、縫い込みの量に左右されます。当店にお持ち頂ければ、その場で拝見させて頂き、お調べ致します。
※部分ごとのお直しも可能ですが、巾出し・裄出しなど寸法を大きくする場合、筋と言われる生地の折り目が残ります。比較的軽いものならば和裁士の手である程度迄はとれますが、頑固なものになると別途筋消しが必要になる場合があります。ですので何ケ所も直す必要がある場合には洗い張り(この時点で筋は全て消えます)と仕立て直しをお薦め致します。また、古い物、日に焼けて褪色している物などは、表に出ている部分と中に縫い込まれている部分とで色が変わってしまうという可能性もあります。この場合褪色部分に色を掛けてやる必要が出てきます。全ての工程を行うと思った以上に高額になります。加えて筋消しや色掛けも完璧な結果が得られるとは限らないので、年代物や生地の劣化があるものの寸法直しはあまりお勧めしません。
Q:一度袖を通した着物は必ず洗った方が良い?
A:汚れや染み、汗染みなどがなければ必ずしも洗う必要は無く、風を通してあげる(虫干)だけでも良い場合があります。虫干には着物についたシワをとり、着物が吸い上げた湿気を抜く効果があります。ですが汗染みなどは中々視認出来なかったりしますので、適時丸洗いと専門家による染みの有無チェックをお薦めします。早期であれば大抵の汚れは丸洗いで、染みであっても簡単な処理で落とせますが、時間が経って変色(黄変)してしまうと通常の染み抜きでは落とせなくなり黄変抜きや色掛けなどが必要になってきます。
Q:虫干しはどのようにすれば良い?
A:虫干し(陰干し)は良い天気が続いて空気が乾燥しているような日に風通しの良いお部屋(日陰)で、着物を広げること、もしくは着物ハンガーに掛けて吊るしてあげることにより内部に風を通すことを指します。天候にもよりますが、時間にして2~3時間もあれば充分でしょうか。
※風が通るからと直射日光の当たる窓際などはNGです。強い日射しは染料の褪色や生地の劣化の一因となります。
広げたり吊るすのに適した環境になければ、箪笥の引き出しを開けて風を通すだけでも効果はあります。
Q:染みが黄ばんできています。綺麗にはなりますか?
A:染みの状態及び生地の強度にもよりますが、黄変してしまった場合、完全に取る事は中々難しいです。目立たないレベルまで薄くなれば良いですが、そうでない場合もでてきます。その際には、別の色を乗せたり箔を置いたりなどの処理を加えて、目立たなくするなどの方法もあります。
Q:染みがついたのですが、自分で出来る応急処置はありますか?
A:お着物は生地・染料共に天然素材が使われておりとても繊細です。洋服感覚で処理すると生地を傷めたり、色が抜けたりなど被害を広げかねません。着用中に何かをこぼしたりしても濡れ布巾などで拭いたりせず、吸水性の高いタオルなどで軽く押さえて吸わせる程度にとどめて下さい。また、着用後に染みを発見しても無理に落とそうとせず専門家に任せるのが一番です。
※拭いたり、擦ったりという行為は、逆に染みの成分を擦込んでいる様なものなので、ほぼ確実に被害を広げます。
Q:しまっておいた着物を久しぶりに出したらカビや変色が出ています。どうしたら良いでしょうか?
A:表面的なカビに関しては、丸洗いで取れます。ですが、生地の内部に菌糸が伸びている場合には水に通さなければ綺麗にはなりませんので、洗い張り(状況により染み抜きも)となります。変色に関しては、軽微なものであれば染み抜き(状況により色掛けも)して綺麗にする事が出来ます。但し重度の場合は、生地の強度にもよりますが薄くするのが限界となる場合もあります。
Q:カビなどを防ぐ方法はありますか?
A:まず、カビは着用後に丸洗いしてちゃんとしまっていても湿度・室温の条件が揃えば発生してしまうものです。湿気の多い所へ置かない事が一番の対策になりますが、最近の建物は昔の日本家屋とは違い気密性が高く、空気が流れることが少ないので自然と湿気などがこもりやすくなっています。桐の箪笥にしまうのも手ですが、それでも時期などによっては桐の調湿能力が追い付かないこともあるので、年に1~2回は虫干しをして風を通すようにしてあげるのが重要です。
Q:後から出て来る染みを防ぐには?
A:良く点検してしまっておいた着物を久しぶりに出してみたら無かったはずの染みがついていた。良く聞く話ですが、原因としては着用中の「汗」にあります。汗自体はすぐに乾いてしまい付いていた事が分からなくなってしまいますが、生地には残ってしまっています。そして汗に含まれる脂肪酸は時間を掛けて生地を傷めて染みにしていきます。目に見えないものなので対処のしようも無さそうですが、汗が残っているかを調べる方法があります。着用した着物をハンガーに掛けてシワを伸ばしてやりますと、シワの取れ難くなっている部分が出て来ます。これが汗の染込んでいる箇所です。このような箇所を見つけたら、なるべく早いうちに丸洗いと汗抜きをする事をお薦めします。
Q:和箪笥以外での保管には??
A:きものを和箪笥でなく、押し入れやクローゼットにしまう際に注意する事は、畳紙で包み他の物と混ぜない専用の衣装ケースに入れる事と、湿気の少ない上段を利用し、壁と衣装ケースの間に隙間を作り、湿気が伝わらない様にした上で除湿剤をいれ、こまめな交換をする事です。
※畳紙にはそれ自体にある程度の吸湿性と通気性があるので、きものを包むのに適していますが、和紙で出来ていますので耐久性はあまり高くありません。くたびれて来たり湿気を吸ってるなと思ったらすぐに交換するのを推奨します。
Q:絹は虫が喰わないって聞いたんだけど?
A:絹製品は、比較的喰われ難くはありますが、食べ汚しが残っていたり、ウール製品などと一緒に収納していたりすると、喰われる事があるようです。対策としては着用後の点検の徹底と収納環境の状態に気をつける事ですが、目に見え難い汚れや、後になって変化するシミ等もあるので、専門店に使用状況などを伝えた上で任せてしまうのも手です。保管場所に関しては除湿剤などの湿気対策と製品の混在を避ける事が肝要です。
Q:着物にアイロンがけって可能?
A:可能ではありますが、色々注意点があります。まず、アイロンを掛けなければならない状況ですが、通常考えられるのは着用前のたたみシワを取るときや着用後の着付けしわを取るときになります。使用条件として重要になるのは温度管理と、当て布の使用、湿気を避けるの3点になります。温度に関しては素材事に適正温度があり、大概はアイロン自体に表示があるかと思います。また、漢方染め等天然染料の場合、熱を加えると変色する場合があるので目立たない場所にてテストするのを推奨します。絹製品は直接アイロンを走らせると表面にテカリなど不具合が生じます。麻や木綿以外には当て布必須です。他、湿気に関してですが、アイロンは基本的にドライにて使用、スチームは避けます。特に着用後等は汗や空気中の水分など吸い込んでいますので注意が必要です。きものハンガーに掛け湿気やシワを十分に取ってから、残った着付けシワを取るようにして下さい。頑固なシワには霧吹きなども効果ありますが、生地を縮めてしまう可能性もあるので直接の使用は厳禁です。当て布に霧吹きしてアイロンをあてます。※アイロンをかける前に染みや汚れのチェックを忘れない様にして下さい。(シミや汚れの上からアイロンがけしてしまうとそのシミが取れなくなる恐れがあります。
Q:「着物を何時までも美しく保つ!」なんて触れ込みの撥水加工って?
A効果は永遠ではありませんが、確かに水分や汚れが繊維の奥に入り込むのを防ぐので、シミや汚れが付き難くはなりますが、絶対という訳ではありません。加えて染み抜きがし難くなるので、万が一染みになった際に落とせなくなる可能性があります。また、同様の理由で染め替えも難しくなります(染料を撥水してしまうので染めムラの原因になります)他、撥水加工の種類に因っては(各社色々出しています)一部の素材の風合いを殺してしまう事もあります。特に結城紬など独特の風合いを愉しむ物などは影響が大きいようです。
Q:もっとも多いとされるファンデーション汚れの処置は?
A::ファンデーションはどれだけ和装に慣れようが付いてしまうのを防ぎ切るのは難しいものです。一番良いのは専門店に任せてしまう事ですが、着る頻度が多い方などには着る度に染み抜きへ出したりしていられない方も居るかと思います。そういう場合に自己責任になりますが、知っておくと便利な方法があります。ファンデーションや口紅は、油性系の汚れなので”ベンジン”が効果的です。手順としては乾いたタオルを敷き、その上に着物の汚れた部分を置きます。別の乾いたタオルに適量のベンジンを付け、汚れの上から押し下に敷いたタオルへ汚れを移していきます。「汚れを落とす」の言葉通り下のタオルへと落としていきますが、この際擦ってしまったりしないよう気を付けましょう。擦ると汚れが生地の隙間でなく繊維の奥にまで入り込んでしまったりして被害を広げかねません。終了後は乾いたタオルでしっかりと水分を取り、ドライヤー等も使ってしっかりと乾かします。乾かしきらずに収納してしまうと、後で輪じみになったりしますのでしっかりと乾かしたいところですが、熱で変化する染料などもあるのでむやみに熱源を近付けたりせず様子をみながら乾かしていきます。
※生地や染料に因っては色落ちなどが発生する可能性もありますので、あくまで自己責任の上で行って下さい。心配な方は専門家に任せるようにしましょう。